どんぐりはどこ?

("Acorns" Where have all the acorns on the Riverbank gone?)
===ちょっと長いけどラジオドラマのつもりで読んで下さい===


(おはなしのおじいさんが、大きな樫の木の根元に座って、どんぐりを一粒手にしています)

こんなちっぽけな木の実がどうやって、あんな立派な大きな木に育つのでしょう? 

もちろん、地面に植えられたどんぐりの上に、雨が降り、お日さまが注いで、小さな芽が出、それがだんだんに成長して、やがて大きな一本の木になるのです。本当にすばらしいことだと思います。その様子を考えるだけでも、わくわくしてきますね。

それ以外にもどんぐりにはいいことがあります。そう、リスやそのほか小さな生き物達の食べ物になるのです。リバーバンクの仲間達のごちそうです。朝ごはんも昼ごはんも晩ごはんもどんぐりです。でも、皆さんはまねしちゃいけませんよ。歯が折れてしまいます。リバーバンクの仲間達は、とても丈夫な歯を持っているので、しじゅうどんぐりを食べ続けても平気なのです。

これからお話しするのは、そんなリバーバンクのどんぐりが、急になくなってしまった時のこと。

(リバーバンクの森の広場。ハミー、マーサ、GP、カエル、カメ、ふくろうが集まって議論している。中央にはどんぐりが3粒)


リバーバンクの仲間達が、森に集まって話し合いをしています。どんぐり不足は、とても深刻になってきました。何とかして早く解決方法を見つけなければ・・・


GP

こりゃ、何とかしなきゃいけないぜ、ハミー。我が輩のような天才の頭脳を持ってしても、どうしたらいいかさっぱりワカランよ。もうどこにもどんぐりがないじゃあないか。

ハミー

ちょっと待ってGP、まだ、ちょっとは、残ってるよ。ええっとー、ここに3粒。

GP

わかったハミー。3粒あるな。よろしい。でもそれから一体どうすりゃいいんだ、え?

マーサ

私が知りたいのは、誰がどんぐりを持って行ってしまったかっていうことだわ。ねえ、そうじゃない、カエルさん?

カエル

ああ。どんぐりを持って行ったのは誰か、何としても突き止めなけりゃならんな。

ふくろう

誰なんだろう?

カエル

一体何者の仕業だろう?

ハミー

(小声で)GPは何だか気が立ってるみたい・・・。不機嫌そうだし。困ったなぁ。

GP

我が輩が不機嫌だと? 誰だい、そんなことを言ってるのは? ああ、よかろう。そうさ、我が輩は不機嫌だ。マーサ、何か気分を楽しくしてくれるものはないかね。

マーサ

いいわ、私とハミーとで歌を歌ってあげる。

GP

ほう、そりゃいい。どんな歌だい?

マーサ

「どんぐり」っていう歌よ。

GP

何だって! どんぐりなんてどこにもないじゃないか。

マーサ

いいえ、歌の中にはたくさーん、どんぐりがあるわ。


マーサ・ハミー

(歌い始める)

こんな小さなどんぐりだって
おおきな樫の木になるの
はじまりはちっぽけなどんぐりだけど

GP

でも、どんぐりは現に3粒しかないゾ!

マーサ

GP、お願いだから、そんな顔しないで。だって、

(歌い続ける)
ちょっとした言い合いだって
大げんかになっちゃうかも

GP

(歌う)
はじめは少しの言い合いだったのに

マーサ

でもね・・・

(歌う)
誰かがくすくす笑うと
みんなが大笑い

カエル

(歌う)
いつの間にかみんなで笑ってる

マーサ・ハミー・カエル・GP

(歌う)
どんぐりが樫の木に育つみたいに!


GP

そうだ。どんぐりが樫の木に育つみたいに!

カメ

なんでー、みんなはー、歌っているのかなぁ。
この話し合いは、どこをどう間違って、たのしい歌の集会になったんだろう???

GP

そうだとも、カメ君。しばし我々は歌を歌って楽しいひとときを持った。しかーし、今は再び不機嫌だ。どんぐりが3粒しかないからだ。どうしたらいいかね、カエル君。

カエル

どんぐりがこうも少なくなってしまった原因を突き止めるために、ここはひとつ犯人を捕まえようじゃないか。
ちょっとしたアイディアがあるんだが、聞いてくれないか。
賢いカエルさんは、どんぐりどろぼうを捕まえるための名案を皆に話しました。

それはこんな具合です。
森の広場の真ん中に、最後の3粒のどんぐりを置いておきます。誰からも見える場所です。そこに、一晩中見張りを立てておくのです。そうすれば、どんぐりを持って行った犯人が現れたときに捕まえられるかもしれません。

カエル

夜通し見張り番をするのは、高い木の上から月の明かりで周りを見渡すせるふくろうさんと、岩の影に隠れていられるカメ君にやってもらいたい。どうかね?
皆は、すばらしい考えだと賛成しました。

今日の話し合いはおしまいです。3粒のどんぐりを森の中に残して、それぞれの家へと歩いて帰りました。

おっと、失礼。ただ一人「歩いて」帰らなかった人がいました。GPです。彼は、お手製の自家用車に乗って家へ向かっています。

(森の中を疾走する真っ赤な自動車、その名もGP Express。)

GP

やっほう!急がなくっちゃ。新しい発明の続きをしなくちゃならないからな。

マーサ

(GPに内緒で車にもぐり込んでいます。車がどしん、ばたんするのでたまったものではありません)
痛い、痛い!

GP

おや、車が何か言ってるようだな。家はもうすぐだゾ、しっかりしろ。

マーサ

まあよかった。早く着かないかしら。

GP

我が輩は、車がしゃべるように作ったかな?

(家に着きました)

GP

車くん、ドライブはどうだったかね? 楽しかったかい? え、車くん?

マーサ

(車から出てくる)
GP、しゃべっていたのは私よ。自動車はしゃべったりしないわ。

GP

そうかい、道理でそう設計した覚えがないと思ったよ。

(GPの家の中)

GP

マーサ、さあ入った入った。我が輩の新しい発明品を見てくれ給え。

マーサ

まあ、すてきなヘビの絵ね。これはなーに?

GP

これは、設計図さ。目下、ヘビ専用の貨車を作ってるところでね。幅が狭くて、細長い、まさにヘビにぴったりの車さ。どうだい?

マーサ

ス、ステキだと思うけど、でも、リバーバンクにはヘビはいないんじゃないかしら・・・

GP

そこはそれ、このすばらしい貨車を知ってヘビがたくさんやってくるかもしれないじゃないか。
ところでマーサ、なんで我が輩の家までついてきたのかね?

マーサ

そうだったわ。私、ヒモを探しているの。うちの洗濯物干し場で使いたいの。GPの所にはいろんなものがあるでしょ、だから見つかるかと思って。

GP

ヒモかい? 済まないね、先週全部使ってしまったよ。

マーサ

そう、わかったわ。リバーバンクの周りでまた探してみましょう。ドライブさせてくれてありがとう。さようなら。

そのころ、森の真ん中に置かれたどんぐりのまわりでは・・・

カメ

どんぐりの見張り番って、ほんとに眠くなるナァ。ふわ〜。%%%(~O~)
夜になりました。
お月様が明るく光り、さわやかな夏の夜風が森を包んでいます。

カメ君は・・・おやおや、寝てしまいまっていいました。ふくろうさんも、木の上で眠っていますよ。

さて、どんぐりは・・・?

あれっ、土の中から手がにょっきり現れて、どんぐりをどこかに持って行ってしまいました。カメ君もふくろうさんも、あんまりよく眠っているので、それに気が付きません。さあ、たいへん。それからどうなったでしょう。

(次の朝。GPの家)

マーサ

ふくろうさんとカメ君の両方とも眠ってしまって、目が覚めたときにはどんぐりは全部なくなっていたんですって。困ったわ。カメ君が、ものすごくうろたえてしまってるの・・・。

GP

ところで、どんぐりを取った犯人は分かったのかい?

マーサ

いいえ、誰にもわからないわ。
そうそう、私まだヒモが見つからないんだけど。

GP

おっと、ヒモならあったよ。そこに丸めてあるから持って行くといい。

マーサ

ありがとう。丁度いいもの干しになるわ。(ヒモをくわえて出ていく)

(森の真ん中。カエル、ハミー、ふくろうがいる)

ハミー

一体どんぐりはどこにいっちゃったんだろう。カエルさん、ここに確かにドングリが3粒あったよね。本当にどうしちゃったのかなぁ・・・

カエル

見張り役が眠ったからいけないんだ。

ふくろう

誰のことだい?

カエル

お前だよ、まったくアホウなふくろうだな。夜眠るふくろうなんて、どこにいるんだい?

ハミー

おや、カエルさん、ここ見て。何かあるよ。

カエル

何だい、ハミー。

ハミー

穴があいてる。土の中のトンネルの入り口だよ、きっと。どんぐりを取った人は、この穴からどこかに持って行ったんだよ。ボク、行って調べてみる。

カエル

そりゃいい。えらいぞ、ハミー。
でも気を付けるんだ。穴に入って道に迷ったら、戻って来られなくなるかも知れない。体の回りにヒモを結びつけてから、穴に入るといい。もし帰り道がわからなくなったら、ヒモを伝って出て来るんだ。

ハミー

そうか、そりゃいい。ヒモを探してくればいいんだね。(と歩み去る)

(GPの家。リュックサックを背負ったカメが入ってくる)

GP

やあ、やあカメ君。何を背負ってるんだい? 
そんなところにいないで入って来給え。我が輩の新発明品をご覧よ。

カメ

本当にごめん、GP。ぼく、サヨウナラを言おうと思って来たんだ。

GP

おや、バカンスかい?

カメ

いいや。ぼくリバーバンクを離れるんだ。もう永久に。
ゆうべ、ぼく眠ってしまって、みんなの大切などんぐりがすっかり取らちゃった・・・。ぼくのせいなんだ。もう、ぼくなんてみんなに嫌われちゃってる。だからぼくは出ていくよ。さようなら。

GP

ナンセンス! そんなこと気にするな!

カメ

ぼくは一人で森に行くよ。(と、部屋から出ていく)

GP

なんてこった。行っちゃったよ。大切な友だちなのに!

カメ君は、一人寂しく森の奥へと歩みを進めていきました。

カメ

みんなぼくのことなんかキライだ。

(マーサの家。マーサはGPにもらったヒモを、川辺の杭に結びつけたところです)

マーサ

ヒモの一方は結びつけたし、もう一方をどこかに結びつけたら、すてきな洗濯干し場になるわ。これでお日さまの下で洗濯物が乾かせるわね。
あー、それにしてものどが渇いた。ちょっと、水を飲みましょう。(川の水をごくごく)

ハミー

カエルさんはヒモを持って来いって言ったけど。
GPの所にはなかったし・・・

おや! 棒にヒモが結んである! ついてるナァ。これをもらっていっちゃおう。(がじがじがじ・・・)

マーサ

お水、おいしいかった!さーて、もの干しの続きをしましょう。・・・
あらっ、さっき確かにここにヒモを結びつけておいたのに。ないわ!

(さっきハミーが見つけた不思議な穴の周り。カエルとハミーがいます。ハミーは、ヒモの一方を大きな石に結び付け、一方を自分の体に巻き付けています。)

ハミー

あ、あー、これで準備はできた、と。
一体、何が起きるかなぁ。何も起きないよね。この穴に入ってどんぐりがどうなったか調べるって、確かにボクそう決めたんだ。
そうだ、そうだ。自分で言い出したんだよね。

・・・カエルさん、無事を祈っておくれ。

カエル

大丈夫。行っておいで、ハミー。

(ハミーは暗いトンネルの中を進みます)


カエル

一体ハミーはどうなるやら? この穴は、本当にどこにつながっているんだろう。もうここでじっとしてはおれん!(と、立ち去る)

(GPの家の庭。GPは、完成したヘビ用貨車を前にご満悦)

GP

時々我が輩は、自分にこう言いたくなるわい「GPよ、お前は何とすばらしい発明家なんだ」とな。

(ヘビ用貨車の下から声がします)

助けてー。

GP

おや、我が輩の発明品を求めているヘビさんのお出ましかな?
そこにいるのはGPなの? 出してー!

GP

ヘビさんは、我が輩の名前をご存じと見える。
どれどれ、ちょっと車をずらしてみればヘビさんが出てこられるかな。

(貨車の下の土の中から現れたのは、ハミーです)

GP

おやまあ、なんだってハミーが土の中から出て来るんだい? マーサにあげたはずのヒモを巻き付けてるし。

ハミー

これはね・・・(とハミーは、これまでのいきさつをGPに話しました。)

(マーサは、無くなったヒモをあちこち探し回っています。とうとう、森の広場で石に結びつけられたヒモを見つけました)

マーサ

まあ、こんな所にあったわ。そうね、これこそGPにもらった私のヒモよ。穴ぼこの中に垂れているけど、引っ張ってみましょう。

(マーサは、ヒモの片方がハミーの体に巻き付けられていることなんて知りません。一生懸命ヒモを引っ張ります)


ハミー

・・・とまあ、こんなわけでボク、ここまできちゃったのさ。

やや、なんか体が引っ張られるー。わー。ナンダなんだ。と、とりあえずそういうわけで。じゃあ、また、GP。

GP

またな、ハミー。おっと、もし穴ぼこの中でヘビさんを見かけたらこの車のことを宣伝しといてくれよ。頼んだぞぅ。

(トンネルの中。ハミーは、後ろ向きにぐんぐん引っ張られていきます)

ハミー

わぁい。勝手に体が戻って行くー! らくちん、らくちん。きゃっ、きゃっ。きゃっ、きゃっ。

マーサ

ふう、もう私引っ張れないわ。それに穴の中から変な音がするみたい。

(ハミーが穴ぼこの中から出てきます)

ハミー

マーサか、ここで一体何してるんだい?

マーサ

まあ、ハミー。あなたこそ何してるのよ? 私のヒモを体に巻き付けたりして。

ハミー

ボク、この穴ぼこを見つけて、どんぐりを取った人がきっとどこかにいると思って中に入ったんだ。そしたら、どう? GPの家の所に出ちゃったんだよ。

マーサ

ちょっと待ってハミー、まさかどんぐりを取ったのはGPだって言うんじゃないでしょうね。彼はそんなこと絶対にしないわ。

ハミー

う、うん。ボクもわかってるよ。

それより、ヒモを勝手に取ってごめんよ。GPがこのヒモはマーサのだって言ってた。

マーサ

いいのよ、ハミー。それにしても、ここからGPの家までトンネルを掘る人がいるかしら?
このトンネルを掘ったのは、こ・の・おれでさぁ。

マーサ

イヤだ、ハミー、変な声出さないでちょうだい。

ハミー

ボ、ボク何も言ってないよ。
あはは、この麗しい声の持ち主は、お・れ。

(と、穴の中からフェレットが顔を出す)
ビリー・ボブ・フェレットでさぁ。おっす!

マーサ

お、おっす・・・

ハミー

お、おす・・・このトンネルを掘ったのは、君だったの?

ビリーボブ

「トンネルを掘ったのはお前さんかい」と聞かれりゃ、この首を上下に振るさね。
不肖ビリー・ボブ・フェレットは、この地面の下で暮らしておるのでありますから。

(歌い出す)
土の中は快適さ
じゃがいもが育つ所さ
静かで涼しくて快適で
遊ぶのも寝るのも土の中さ

土の中は快適さ
大木は根を張り
ニンジンやビートはおやつに
穴の奥底にあるのさ

というわけで、お目にかかれて光栄です。

マーサ・ハミー

こちらこそ。

ビリーボブ

おれっちは、いろんな食べ物を貯めて、好きなときに食べてるんだ。ここらへんにあったどんぐりもたっぷり集めたぜ。森の中に、どんぐりの隠し場所があって、どんぐり山って呼んでるけどな。

ハミー

じゃあ、ここにあったどんぐりをみんな持って行ったのは君だったの?

(そのころ、森の中をとぼとぼと歩いていたカメは、このビリー・ボブの「どんぐり山」を偶然見つけました。ものすごい量です。これだけあれば、リバーバンクのみんなが、お腹いっぱい食べてもまだまだ残るでしょう。カメは早くみんなに知らせなければと思い、もとの自分のすみか向けて、一目散に、ゆっくりと歩き出しました)

これで、なくなったどんぐりの謎は解けました。
しかし、これでお話しが終わりではありません。

GP会心の新発明であるヘビ用貨車を使いたいというヘビさんは一向に現れませんでした。そんな時、GPはすばらしいアイディアを思いつきました。新しくできたトンネルの中にGPの貨車を走らせて、リバーバンク地下鉄としたのです。

ビリー・ボブは自分の掘ったトンネルの中を、たくさんの動物達が貨車に乗って通って行くのを楽しく見ていました。




 このお話は、From little acorns come great oaks. (大事もはじめは些細なことから、みたいな意味)ということわざが下敷きになっていると思われますが、ちーっともお説教くささがありません。

 美しい自然、たのしい音楽、かわいい小動物たち、友情、冒険、などなど『Once Upon A Hamster』にはいろいろな魅力が詰まっています。